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ポータブル電源のUPS機能には、3つの給電方式がある。

常時インバータ・ラインインタラクティブ・常時商用の3種類で、停電時の切替速度がそれぞれ違う。

「UPS機能付き」と書いてあっても、方式によって守れる範囲が変わってくる。

たとえば切替速度0msの製品と20msの製品では、デスクトップPCへの影響がまったく異なる。

この記事では3つの給電方式の仕組みと特徴を整理した。

「UPS機能」が何をしてくれるのか、パススルー充電との違いも含めて解説していく。

京寺美里(Kyodera miri)
京寺美里(Kyodera Miri)
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パススルー充電とUPS機能は何が違う?

まず押さえておきたいのが、パススルー充電とUPS機能の違い。この2つは混同されやすいが、役割が違う。

UPS機能とパススルー充電の違い

パススルー充電は「充電しながらAC出力も使える」機能。

コンセントからの電力を受けつつ、出力ポートから機器に給電できる。

ただし、これだけでは停電保護にはならない。コンセントの電力が途切れたとき、どうなるか。バッテリー駆動への切替がスムーズに行われるかは別問題になる。

UPS機能は、ここに「停電検知→バッテリー給電への自動切替」を加えた仕組み。

停電を検知した瞬間にバッテリーからの給電に切り替わるため、接続した機器への電力供給が維持される。

つまりUPS機能は、パススルー充電をベースに停電時の自動切替を保証したもの、と考えるとわかりやすい。

見分け方のポイント

製品スペックに「UPS機能」「UPSモード」と明記されていれば、停電時の自動切替に対応している。

「パススルー充電対応」とだけ書かれている場合は、充電しながら使えるだけの可能性がある。切替速度(ms)の記載があるかどうかも判断材料になるだろう。

なお、UPS機能は停電時の切替保護であり、雷サージへの対応とは別物。

「UPS機能付き=雷にも安心」ではないので、この点は注意してほしい。

雷サージ対策について詳しくは、ポータブル電源は雷で壊れる?サージ保護付き製品まとめで解説している。

UPS給電方式は3種類ある

ポータブル電源のUPS給電方式は3種類ある

UPSの給電方式は大きく3つに分けられる。

ポータブル電源のUPS機能も、基本的にはこの3方式のいずれかに該当する。

方式通常時の給電経路停電時の切替速度電圧安定性コスト
常時インバータ常時バッテリー経由(AC→DC→AC)0ms(瞬断なし)最も安定高い
ラインインタラクティブコンセント直通+AVRで電圧調整4〜10ms安定中程度
常時商用コンセント直通5〜20ms変動の影響を受ける安い
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この表で注目してほしいのは「切替速度」の列。

デスクトップPCのATX電源には「ホールドアップタイム」と呼ばれる余力がある。電力が途切れても、内部のコンデンサに蓄えた電力で約10〜16ms間は動作を維持できる仕組み。

切替速度がこのホールドアップタイム内に収まれば、PCは停電に気づかず動作を続けられる。逆に超えてしまうと、電源が落ちてデータ消失やファイル破損のリスクが生じる。

方式を選ぶ際の判断基準は、この「切替速度とホールドアップタイムの関係」にある。

UPS給電方式は3種類ある

次のセクションから、各方式の仕組みを詳しく見ていく。

常時インバータ方式

常時インバータ方式

常時インバータ方式は、3つの方式の中で最も保護性能が高い。

仕組み

通常時からインバータを経由して給電する方式。

コンセントからのAC電力を、いったんDC(直流)に変換する。それをバッテリーに蓄え、再びAC(交流)に変換して出力する仕組み。

常にインバータを通しているため、コンセント側の電圧変動やノイズが出力に影響しにくい。いわば緩衝材を挟んだ状態で、機器に安定した電力を届けている。

切替速度:0ms

停電が起きても切替が発生しない。そもそもバッテリー経由で給電し続けているため、商用電源が途切れてもシームレスに継続できる。

「無停電」の名にもっともふさわしい方式といえるだろう。

向いている用途

NAS、サーバー、精密な測定機器など、瞬断が許されない機器に向いている。

一方で、常時インバータを稼働させるため電力効率は3方式の中で最も低い。電力ロスが常に発生する点はデメリットになる。

専用UPSの世界ではデータセンターや医療機器向けに使われる方式で、価格帯も高め。

ポータブル電源で常時インバータ方式を採用している製品は、現時点では少ない。

ラインインタラクティブ方式

ラインインタラクティブ方式

ラインインタラクティブ方式は、保護性能とコストのバランスがよい方式。

仕組み

通常時はコンセントの電力をそのまま機器に流す(パススルー)。ここまでは後述の常時商用方式と同じ。

違いはAVR(自動電圧調整器)を経由する点にある。

コンセントの電圧が上下しても、AVRが補正してくれる。安定した電圧を機器に届けられる点が強み。

大型マンションや商業地帯など、電圧変動が起きやすい環境でも安定した給電ができる。

停電が起きると、バッテリーからの給電に切り替わる。

切替速度:4〜10ms

ATX電源のホールドアップタイム(約10〜16ms)の範囲内。デスクトップPCが落ちるリスクは低いといえる。

オフィスのPC保護用としては、この方式で十分と言われている。

向いている用途

デスクトップPC、ネットワーク機器、家庭のワークステーションに適している。

常時インバータ方式ほどの電力ロスがなく、かつ電圧変動にも対応できる。「普段は省エネ、いざというときはしっかり守る」タイプの方式。

常時商用給電方式

常時商用給電方式

常時商用給電方式は、もっともシンプルでコストが低い方式。ポータブル電源のパススルー充電は、構造的にこの方式に近い。

仕組み

通常時はコンセントからの電力をそのまま機器に流す。バッテリーを経由しないため、電力ロスがほとんどない。

停電を検知すると、バッテリーからの給電に切り替わる。この切替の際に商用電源側を切り離す必要があり、ここで瞬断が発生する。

切替速度:5〜20ms

ATX電源のホールドアップタイム(約10〜16ms)と重なる範囲。5〜10msなら問題ないことが多いが、15〜20msになるとホールドアップタイムを超える可能性がある。

つまり、常時商用方式の切替速度ではデスクトップPCが落ちるかどうかは環境次第ということになる。

実際のところ、ATX電源のホールドアップタイムは製品ごとにバラつきがある。

余裕のある電源ユニットなら20msでも耐えるかもしれない。ギリギリのものなら15msで落ちる可能性もある。

ラインインタラクティブ方式との違い

常時商用方式にはAVR(自動電圧調整器)がない。そのため、停電以外の電圧変動(電圧低下や電圧上昇)には対応できない。

電圧が安定している一般的な住宅環境なら問題ないことが多い。

ただし大型マンションや工場の近くなど、電圧変動が起きやすい環境では注意が必要。

向いている用途

ポータブル冷蔵庫やLED照明など、一瞬の電力途切れで壊れにくい機器に向いている。軽量・安価を優先したい場合にも適した方式。

デスクトップPCのバックアップに使う場合は、切替速度を確認した上で判断したい。

「ups 20ms」は速い?遅い?

「ups 20ms」は速い?遅い?

UPSの切替速度として「20ms」という数値をよく見かける。

20msは常時商用方式の上限にあたる数値。UPS全体の中では速いとは言えない。

2026年時点では、10ms以下やゼロ瞬断(0ms)に対応したポータブル電源も出てきている。以前は20msが一般的だったが、選択肢が広がりつつある。

もっと詳しく切替速度の影響を知りたい場合は、ポータブル電源で雷からPCを守れるか?専用UPSとの比較で、ATXホールドアップタイムとの関係を具体的に解説している。

EPSとUPSの違い

ポータブル電源におけるEPSとUPSの違い

ポータブル電源のスペックには「UPS機能」だけでなく「EPS機能」と書かれている製品もある。

両者は似ているようで、目的が違う。

UPS(Uninterruptible Power Supply)は「瞬断防止」が目的。

停電を検知して数ミリ秒〜十数ミリ秒でバッテリー給電に切り替える。 PCやサーバーなど、一瞬の電力途切れでもダメージを受ける機器を守る仕組み。

EPS(Emergency Power Supply)は「非常用電源」が目的。

停電時にバッテリー給電に切り替わるが、UPSほどの切替速度は保証しない。 数秒かかるケースもある。

ポータブル電源ではEPS/UPSの区別が曖昧

ただし、ポータブル電源業界ではこの区別が厳密ではない。

「UPS機能」と書いてあっても切替速度が20msだったり、「EPS機能」でも10msだったりする。 メーカーごとに用語の使い方がバラバラなのが実情。

スペック表の「UPS」「EPS」という文字だけで判断するのは危険だろう。

UL1778認証という判断基準

ポータブル電源ではEPS/UPSの区別が曖昧

見分ける指標のひとつがUL1778認証1

UL1778は、UL(Underwriters Laboratories)が定めたUPSの安全規格。

電気安全性・熱管理・機械的強度などを第三者機関が検証する認証制度になる。

たとえばJackeryの一部製品には「UL1778 認証済みのUPS」と明記されている。 メーカーの自称ではなく、第三者が「UPS」として認めた製品ということ。

「UPS機能付き」とだけ書かれた製品とは、裏付けのレベルが異なる。

スペック表で確認すべきポイント

EPS/UPSの表記が曖昧な以上、確認すべきは具体的な数値と認証。 注目してほしいのは次の3点。

  • 切替速度(ms)の記載があるか:数値が明記されていれば判断しやすい
  • UL1778などの認証表記があるか:第三者認証は信頼性の目安になる
  • 「UPS」「EPS」どちらの表記か:ただしこれだけでは判断材料として不十分

冷蔵庫やLED照明なら、EPS表記でも実用上は問題ない。

デスクトップPCやNASなら、切替速度の数値と認証の有無まで確認したい。

ポータブル電源におけるEPSとUPSの違い

UL1778認証表記のあるポータブル電源リスト

カタログ上確認できたUL1778認証表記のあるポータブル電源を一覧にする。

メーカー製品名切替速度
Jackery1000 New20ms以下
Jackery2000 New20ms以下
Jackery3000 New20ms以下
AnkerSOLIX C1000 Gen 210ms
AnkerSOLIX F150020ms以下
AnkerSOLIX F200020ms以下
AnkerSOLIX F260020ms以下
AnkerSOLIX F380020ms以下
EcoFlowDELTA Pro 310ms
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※ 各メーカーの公式サイト・製品ページの情報をもとに作成。

常時インバータ方式(オンラインUPS)対応モデル

切替速度0msのオンラインUPS方式に対応するモデルも登場している。

メーカー製品名切替速度
EcoFlowDELTA Pro Ultra0ms
Jackeryポータブル電源 3600 Plus0ms
Jackeryポータブル電源 5000 Plus0ms
▶︎ スマホの方は横にスクロールできます

※ オンラインUPSモードの場合、出力が制限される機種もある。

まとめ — 用途で方式を選ぶ

ポータブル電源のUPS機能とは?3つの給電方式と切替速度の違いを解説

UPS給電方式の選び方は、守りたい機器で決まる。

デスクトップPCやNASを守りたいなら

  • ラインインタラクティブ方式以上(切替速度10ms以下)を選ぶと安心。
  • 常時商用方式(切替20ms)だと環境によってはPCが落ちる可能性がある。

冷蔵庫やLED照明の停電対策なら

  • 常時商用方式で十分。切替時の瞬断が問題になりにくい機器。
  • EPS機能でも実用上は対応できる。

精密機器やサーバーを守りたいなら

  • 常時インバータ方式(切替0ms)が理想。
  • ただし対応するポータブル電源は少ないため、専用UPSも検討の価値がある。

ポータブル電源と専用UPSの使い分けで迷う場合は、専用UPSとの比較記事も参考にしてほしい。切替速度・サージ保護・コストの3軸で比較している。

脚注

  1. UL1778認証について(ニシム電子工業株式会社) ↩︎