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リチウムイオン電池搭載ポータブル電源の火災事故が多発。経産省主導で安全性要求事項を策定、Sマーク認証に追加された。業界団体JPPSAも設立。今後は、消費者への情報提供を強化しつつ、技術進化に対応した基準の継続的な見直しが課題。

近年、リチウムイオン蓄電池を搭載し、交流電力を出力できるポータブル電源は、家電製品やスマートフォンの充電手段として広く普及しています。
しかし、その一方で、「製品評価技術基盤機構(NITE)1」や「事故情報データバンクシステム(消費者庁)2」には、ポータブル電源の使用による事故、特に火災の発生に関する情報が寄せられており、その件数は増加傾向にあります。

こういった背景から、経済産業省はポータブル電源の安全対策に関する検討会を立ち上げ(2023年度)、官民が協力して製品のリスクシナリオと必要な安全対策について検討を進めました。
この記事では、ポータブル電源の安全性に関する技術基準の策定過程、業界団体の設立、および今後の課題について分析と考察を行います。
ポータブル電源の安全な利用を促進するために、これらの情報が役立つことを期待します。
ポータブル電源の安全性に関する課題
ポータブル電源は、電気用品安全法の規制対象外3であるものの、大容量のリチウムイオン蓄電池を搭載しているため、火災や感電などの電気的リスクが存在します。このような状況の中、製品固有の安全要求事項が存在しないことが、安全対策を講じる上での課題となっていました。
ポータブル電源の事故発生状況を見ると、そのほとんどが火災事故であり、製品そのものの焼損に加え、周囲への延焼といった被害も発生しています4。また、製品の構造や安全対策に関する規格が統一されていないため、各製造業者が独自に安全対策を講じている状況です。
独自に安全対策:Jackeryが示す”本気” ポータブル電源に新たな安全基準を打ち立てた真意とは?
安全性要求事項の策定
このような課題を解決するため、経済産業省は、2023年度に安全対策に必要な要求事項の策定に向けた官民参加型の検討会を立ち上げました。この検討会では、製造・輸入事業者などが主体となり、ポータブル電源のリスクシナリオから必要なリスク低減策を考察し、「ポータブル電源の安全性要求事項(中間とりまとめ)5」が策定されました。
この安全性要求事項は、電気用品安全法の技術基準を考慮しつつ、ISO/IEC GUIDE 516 の手順に従って、ポータブル電源のリスクシナリオから必要なリスク低減策を要求事項としてまとめたものです。また、JIS C 62368-1:2021+追補 1:20227 をベースとし、ポータブル電源特有のリスクを考慮して作成されています。
安全性要求事項の具体的な内容
「ポータブル電源の安全性要求事項(中間とりまとめ)」は、製品の安全性を確保するために、多岐にわたる要求事項を規定しています。
以下に、主な要求事項をまとめます。
- 適用範囲:この規格は、蓄電可能な電源であって、汎用の交流出力を持つもの、直流出力を有するもの、携帯形、移動形、またはキャスター付きの可動形であるポータブル電源を対象としています。
- 引用規格:この規格は、JIS C 62368-1:2021+追補 1:2022とともに用いられ、その他、JIS C 0920、JIS C 4411-1、JIS C 4411-3、JIS C 4412、JIS C 4610、JIS C 6575、JIS C 8303:2007、JIS C 8715-2:2019、JIS C 62133-2、JIS C 60068-2-6:2010などの規格が引用されています。
- 表示と情報:製品の表面には、製造業者名、モデル番号、供給電圧の種類、定格入力電圧、定格入力周波数、定格入力電流、定格出力電圧、定格出力電流、感電保護クラス、IP等級など、必要な情報を表示する必要があります。
- 直流入出力端子:直流入力端子と直流出力端子は、互換性があってはならず、誤った接続による危険を防止する必要があります。
- 交流出力の安定性:交流出力の電圧変動率は、定格交流出力電圧の10%以内でなければなりません。
- 電池の保護:電池とその保護回路は、JIS C 62133-2の5.7(品質計画)またはJIS C8715-2:2019の5.8の品質計画を参照し、過充電や過放電から保護される必要があります。
- 水没後の処置:ポータブル電源が水没した場合の処置について、説明書に記載する必要があります。
- ガス発生時の保護:電池からガスが発生する可能性がある場合、ガスを逃がす機構を設け、ガスが充満するような場所での使用を禁止する必要があります。
- マルチタップの使用禁止:定格入力電流が15A以上のポータブル電源では、マルチタップの使用を避けるよう表示する必要があります。
ポータブル電源の分類
ポータブル電源は、その形状と使用方法によって、以下の3つに分類されます。
- 携帯形:片手で容易に持ち運ぶことができるポータブル電源
- 移動形:取っ手などを用いて持ち上げ、片手で持ち運ぶことを意図したポータブル電源
- 可動形(キャスター付き):通常は定置して使用するが、キャスターによって移動することができるポータブル電源

Sマーク認証への追加基準採用
経済産業省が公開した「ポータブル電源の安全性要求事項(中間とりまとめ)」は、「Sマーク認証の追加基準8」として採用されました。採用されたことにより、Sマーク認証を取得するためには、JIS C 62368-1に加えて、この追加基準を満たす必要が生じました。このことは、ポータブル電源の安全性を高めるための重要な一歩と言えるでしょう。
一般社団法人日本ポータブル電源協会(JPPSA)の設立

ポータブル電源の安全性向上と業界の健全な発展を目指し、2025年2月7日に「一般社団法人日本ポータブル電源協会(JPPSA)9」が設立されました。
この協会は、消費者の安心・安全の向上を目的として、製品の安全性向上、消費者への情報提供、業界連携強化などを目指しています。
JPPSAの会員には、ポータブル電源の主要な製造業者や関連企業が名を連ねています。
正会員として、アンカー・ジャパン株式会社、EcoFlow Technology Japan株式会社、エレコム株式会社、株式会社JVCケンウッド、株式会社Jackery Japan、BLUETTI JAPAN株式会社が参加し、賛助会員として、株式会社ポスタリテイトが参加しています。
詳しくは「ポータブル電源の安全基準策定と普及を目指す「一般社団法人日本ポータブル電源協会(JPPSA)」設立」をご覧ください。
日本ポータブル電源協会設立の背景と目的
JPPSAの設立は、ポータブル電源の普及に伴い、消費者が安全に製品を利用するための環境を整備する必要性が高まったことが背景にあります。協会は、以下の活動を通じて、その目的を達成しようとしています。
- 製品の安全性向上:安全基準の策定や認証制度の確立を通じて、より安全な製品の開発を促進します。
- 消費者への情報提供:ポータブル電源の正しい使い方や選び方に関する情報を提供し、消費者の安全意識を高めます。
- 業界連携の強化:製造業者、販売業者、検査機関などが連携し、業界全体の品質向上を目指します。
- 業界の健全な発展:安全な製品の普及を通じて、業界全体の信頼性を高め、健全な発展を促します。
▶︎ポータブル電源の市場動向や安全性の重要性を取り上げた記事広告(日刊工業新聞)
協会関係者
JPPSAの設立に尽力した主要な人物には、以下の方が挙げられます(以下、敬称略)。
- 井田 真人:アンカー・ジャパン株式会社 執行役員、一般社団法人日本ポータブル電源協会 代表理事
- 長浜 修:EcoFlow Technology Japan株式会社 危機管理対策部部長・RV事業部部長、一般社団法人日本ポータブル電源協会 理事
- 高橋 勝利:株式会社Jackery Japan 代表取締役、一般社団法人日本ポータブル電源協会 理事
- 川村 卓正:BLUETTI JAPAN株式会社 COO、一般社団法人日本ポータブル電源協会 理事
- 安井 章:エレコム株式会社 商品開発部アウトドア事業課 課長代理
- 片貝 易一:株式会社JVCケンウッド メディア事業部技術推進室シニアサポーター
- 加藤 真平:株式会社ポスタリテイト 代表取締役社長
安全基準策定における関係者
ポータブル電源の安全性に関する技術基準策定には、多くの専門家や関係者が関わっています。
- 池田 誠:東京大学 学識経験者、ポータブル電源の安全性能に係る技術基準等検討委員会(本委員会)委員長
- 岩澤 一範:一般財団法人日本消費者協会、本委員会 委員
- 犬伏 由利子:一般財団法人消費科学センター、本委員会 委員
- 松本 敏彦:独立行政法人製品評価技術基盤機構、本委員会 知見者
- 加藤 正樹:一般財団法人電気安全環境研究所、本委員会 登録検査機関、ワーキンググループ(WG)オブザーバー
- 森泉 貴雄:一般財団法人日本品質保証機構、本委員会 登録検査機関
- Micheal Teng:テュフラインランドジャパン株式会社、本委員会 登録検査機関、WGオブザーバー
- 金野 郁郎:株式会社UL Japan、本委員会 登録検査機関、WGオブザーバー
- 井上 博史:一般社団法人日本電機工業会、本委員会 関連団体、WGオブザーバー
- 相磯 均:一般社団法人電子情報技術産業協会、本委員会 関連団体、WGオブザーバー
- 中川 裕:一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会(第 108 委員会)、本委員会 関連団体(第1回委員会)
- 古市 浩司:一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会(第 108 委員会)、本委員会 関連団体(第2回及び第3回委員会)
- 原田 寧:一般社団法人電池工業会、本委員会 関連団体、WGオブザーバー
- 神沢 吉洋:経済産業省 製品安全課、本委員会 オブザーバー、WGオブザーバー
- 大池 仁美:経済産業省 製品安全課、本委員会 オブザーバー、WGオブザーバー
- 遠藤 薫:経済産業省 製品安全課、本委員会 オブザーバー、WGオブザーバー
- 内藤 智男:経済産業省 国際電気標準課、本委員会 オブザーバー、WGオブザーバー
- 籠 寛之:経済産業省 情報産業課、本委員会 オブザーバー、WGオブザーバー
- 鈴木 雅友:経済産業省 情報産業課、本委員会 オブザーバー、WGオブザーバー
- 住谷 淳吉:一般財団法人電気安全環境研究所、本委員会 事務局、WG事務局
- 上参郷 龍哉:一般財団法人電気安全環境研究所、本委員会 事務局、WG事務局
- 安士 修平:一般財団法人電気安全環境研究所、本委員会 事務局、WG事務局
- 加藤 有利子:一般財団法人電気安全環境研究所、本委員会 事務局、WG事務局
ワーキンググループ(WG)関係者
ポータブル電源の安全性能に係る技術基準等検討ワーキンググループ(WG)には、以下の関係者が参加しています。
- 片貝 易一:株式会社JVCケンウッド、WG 主査
- 高橋 勝利:株式会社Jackery Japan、WG 副主査
- 植田 恭平:アンカー・ジャパン株式会社、WG 委員
- 長浜 修:EcoFlow Technology Japan 株式会社、WG 委員
- 山田 智裕:エリーパワー株式会社、WG 委員
- 江口 聖一:エレコム株式会社、WG 委員
- 原田 広一:多摩電子工業株式会社、WG 委員
- 中原 繁治:株式会社電響社、WG 委員
- 小池 修一郎:BLUETTI JAPAN 株式会社、WG 委員
- 畑 佑磨:株式会社ポスタリテイト、WG 委員
- 曽根 崇史:本田技研工業株式会社、WG 委員
- 板越 秀夫:独立行政法人製品評価技術基盤機構、WG 知見者
技術基準策定のタイムライン
ポータブル電源の安全基準策定は、以下のタイムラインで進められました。
- 2023年
- 経済産業省がポータブル電源の安全対策検討会を立ち上げ
- 安全性要求事項の中間とりまとめが策定
- JIS C 62368-1をベースとした検討
- 電磁波試験の実施
- 各種試験(交流/直流出力変動試験、各種安全試験、振動試験など)の実施
- ポータブル電源の安全性能に係る技術基準等検討委員会(本委員会)及びワーキンググループ(WG)の設置
- ポータブル電源の構造及び安全対策の現状把握
- 2024年
- 2月29日:一般財団法人電気安全環境研究所が、ポータブル電源の安全性要求事項(中間とりまとめ)を発表
- 6月3日:Sマーク認証におけるポータブル電源の追加基準が制定
- 一般社団法人日本ポータブル電源協会(JPPSA)設立
- 2025年
- 2月7日:一般社団法人日本ポータブル電源協会(JPPSA)の設立発表
今後の課題と展望
ポータブル電源の安全性確保に向けた取り組みは、着実に進展していますが、今後の課題も残されています。
- 安全基準の早期確立と徹底:技術基準の策定だけでなく、その普及と徹底が必要です。
- 消費者への啓蒙活動:消費者に対して、ポータブル電源の正しい使い方や選び方に関する情報を提供し続ける必要があります
- 業界全体の連携強化:製造業者、販売業者、検査機関などが連携し、業界全体の品質向上を目指すことが重要です
- 国際規格との整合性:国際規格との整合性を考慮した規格策定体制の構築が求められます
- 技術動向への対応:電池技術は日々進化しているため、常に新しい規格と照らし合わせ、基準を更新していく必要があります
- 標準記号の作成:本体に表示できる標準記号(水のかかる場所での使用禁止マークなど)の作成が必要です
- 性能規格の作成:安全性だけでなく、性能に関する規格を策定することで、消費者がより安心して製品を選択できる環境を整備する必要があります
- 容量増加への対応:ポータブル電源を複数台連結して容量を増やす場合に対する規格の策定が必要です
結論
ポータブル電源の安全性に関する技術基準策定と業界の取り組みは、消費者がより安全に製品を利用できる環境を整備するために不可欠です。
経済産業省の主導による官民連携の取り組み、業界団体の設立、そして技術基準の策定と普及を通じて、ポータブル電源の安全性は着実に向上しています。
今後は、消費者への啓蒙活動と合わせて、より安全で信頼性の高い製品の開発が求められます。
ポータブル電源の安全性に関するFAQ
- Q一般社団法人日本ポータブル電源協会はなぜ設立されたのですか?
- A
ポータブル電源は比較的新しい製品区分であり、消費者への正しい使い方や選び方の浸透が課題でした。安全な使用方法の啓蒙や、危険な製品が市場に出回るのを防ぐため、業界のルール策定が必要と考え、経済産業省の協力のもと設立されました。
- Qポータブル電源市場の需要はどのように変化していますか?
- A
以前は災害対策意識の高い方や、ガジェット好きな方、アウトドア愛好家などが主な購入者でしたが、近年は災害の多発や防災意識の高まりにより、災害対策としての購入者が急増しています。また、行政の災害対策備品としての導入も増加しており、急速に普及が進んでいます。
- Qポータブル電源の事故はどのような原因で発生しているのですか?
- A
事故の原因は様々ですが、主なものとしては、水濡れや湿気による故障、誤った使用法による発火などが挙げられます。また、製造販売元が国内にないため、故障や事故の原因を追跡できない製品が流通していることも問題視されています。
- Qポータブル電源の安全性を確保するために、どのような対策が講じられていますか?
- A
業界では、Sマーク認証制度を導入し、経済産業省が公開した「ポータブル電源の安全性要求事項(中間とりまとめ)」を基準として採用しています。さらに、消費者への啓蒙活動として、メディアを通じて正しい使用方法や注意点を啓蒙する活動も計画されています。
- Q「ポータブル電源の安全性要求事項(中間とりまとめ)」とは何ですか?
- A
ポータブル電源の安全対策に必要な要求事項をまとめたものです。JIS C 62368-1をベースに、ポータブル電源特有のリスクを考慮した要求事項を策定しており、過充電保護、端子の標準化、火災からの保護、医療機器での使用禁止などを規定しています。UL規格10は存在しますが、日本の配電事情を考慮した規格は存在しないため、日本独自の基準が重要視されています。
- Qポータブル電源の安全基準はどのように策定・維持されていくのですか?
- A
ポータブル電源の安全基準の策定には、産官学が連携して取り組んでいます。経済産業省の検討会を始め、専門家、消費者団体、登録検査機関、メーカーなどが参加し、規格作成委員会を設置してJIS化や民間規格の策定を目指しています。また、IECへの新規提案や関係国内委員会への入会を通して、国際的な整合性も考慮されています。
- Qポータブル電源を選ぶ際に、消費者はどのような点に注意すべきですか?
- A
消費者は、国内にサービス拠点を持ち、一定の安全基準を満たした製品を選ぶことが重要です。また、製品が水に濡れると感電や爆発の危険性があることを理解し、雨の中での使用は控える必要があります。購入前に、製品の定格や取扱説明書をよく読み、正しい使い方を心がけることが大切です。
- Qポータブル電源はどのような場所での使用が想定されていますか?
- A
ポータブル電源は、アウトドアやキャンプ、防災用途などでの使用が想定されています。近年では、企業の事業継続計画(BCP)対策11としても需要が増加しています。停電時の非常用電源としてだけでなく、日常的な電気製品の使用をサポートするために、多様な容量の製品が選ばれるようになっています。
脚注
- 製品評価技術基盤機構(NITE) ↩︎
- 事故情報データバンクシステム(消費者庁) ↩︎
- 対象非対象解釈例一覧:電気用品安全法 ↩︎
- ポータブル電源の隠れた危険性:火災・爆発 最新ニュースと事故を防ぐためのガイド ↩︎
- ポータブル電源の安全性要求事項(中間とりまとめ)について ↩︎
- ISO/IEC GUIDE 51とは?:安全規格を策定する際の基準となるガイドライン ↩︎
- JIS C 62368-1:2021+追補 1:2022 ↩︎
- S-JQAマーク認証「ポータブル電源に係るSマーク追加基準」制定のお知らせ ↩︎
- 一般社団法人日本ポータブル電源協会 設立のお知らせ ↩︎
- UL規格とは?:UL2743規格は、ポータブル電源の安全性を保証する重要な国際規格 ↩︎
- BCP対策とは? ↩︎
