ポータブル電源大手のBLUETTIが発表した新製品群は、単なるスペック競争からの脱却を宣言するものだ。
- BLUETTI Pioneer Na
- BLUETTI RVSolar 48V
- BLUETTI FridgePower
世界初となるナトリウムイオン電池搭載ポータブル電源と、「冷蔵庫専用ポータブル電源」という大胆なコンセプトの製品は、特に災害大国である日本において、私たちの「備え」の形を根本から変える可能性を秘めている。
発表の背景
BLUETTIは、2025年9月8日から11日までラスベガスで開催されたクリーンエネルギー関連の見本市「RE+ 20251」にて新製品を発表。
ナトリウムイオン電池を搭載したポータブル電源「BLUETTI Pioneer Na」、RV(キャンピングカー)向けの統合型電源システム「BLUETTI RVSolar 48V」、そして冷蔵庫専用の薄型バックアップ電源「BLUETTI FridgePower」の3製品を発表した2。
なぜこのテーマに今注目すべきか
ポータブル電源市場は、容量と出力の大きさを競うフェーズから、より具体的で多様なニーズに応える「ソリューション提案」の時代へと移行しつつある。
BLUETTIは、常に新技術の導入に貪欲で、市場のトップランナーとしてその動きを牽引してきた。
今回の発表は、その姿勢を象徴するものであり、特に「FridgePower」が示す”家電特化”というアプローチは、これまでのポータブル電源の概念を覆すものだ。
災害による停電が頻発する日本において、「食料を守る」という極めて重要な課題に対し、BLUETTIがどのような答えを出したのか、深く掘り下げる価値がある。
発表の要点:何が新しくなったのか
今回発表された3つの製品は、それぞれが明確なターゲットと目的を持っている。
BLUETTI Pioneer Na(パイオニア Na)

世界で初めてナトリウムイオン電池を実用化したポータブル電源3。
リチウムやコバルトといった希少資源を使わず、-25℃の極寒環境でも放電可能な点が最大の特徴だ4。
容量900Wh、出力1,500W(Power Lifting機能で最大2,250W)、ACと太陽光の併用により最短35分で0%から80%まで充電できる。
グローバルでの発売は2025年10月15日が予定されている。
BLUETTI RVSolar 48V System

インバーターや充電器などを一体化したRV(キャンピングカー)向け電源システム。
従来は複雑だった配線を簡素化し、「30分での設置」を謳う。
BLUETTI FridgePower(フリッジパワー)

冷蔵庫のバックアップに特化した薄型電源。厚さ約7.5cm(2.95インチ)というスリムな設計で、冷蔵庫の上や隙間に設置できる。
容量は2,016Wh、出力1,800Wで、最大8kWhまで拡張が可能。
発売は2025年11月4日を予定している。
核心の分析:最も注目すべきは「FridgePower」という発想
今回の発表で個人的に最も衝撃を受けたのは、間違いなく「FridgePower」だ。これは単なる製品ではなく、日本の防災意識に深く突き刺さる”提案”である。
日本では、台風や地震による停電で冷蔵庫の中身がダメになってしまうという経験は、多くの人が共有する痛みだ。
一般的なポータブル電源でも冷蔵庫を動かすことは可能だが、問題は「いざという時に確実に使えるか」という点にある。
ポータブル電源は、ACをオンにしていると、自己放電するため実容量ほど使えないもの。
その点、BLUETTI製品は自己放電率の低さに定評があり、私の過去の検証では「BLUETTI Elite 200 V2」がトップクラスの性能(20製品中)を示した。
そのBLUETTIが、満を持して「冷蔵庫専用」をうたう製品を開発した意味は大きい。
厚さ7.5cmの筐体は、冷蔵庫の上に置くだけでなく、平置き、縦置き、さらには壁掛けにも対応する可能性を秘めており、常設を前提とした設計思想がうかがえる。
これはもはや「防災グッズ」ではなく、「家庭用インフラ」への昇華と言えるだろう。
将来的には、冷蔵庫メーカーと連携したセット販売や、家庭のエネルギー管理システム(HEMS)と連動。
平常時は電力のピークシフトに貢献し、停電時には自動でバックアップに切り替わる、といったスマートホーム化への展開も期待される。
多角的な考察と今後の展望
世界初のナトリウムイオン電池搭載ポータブル電源「Pioneer Na」も、市場に大きな問いを投げかけている。
ナトリウムイオン電池は、リチウムイオン電池に比べてエネルギー密度が低く、重く大きくなるという明確なデメリットがある。
実際、Pioneer Naは同社製の同クラスLFP(リン酸鉄リチウムイオン)電池モデルより大きく重い。
しかし、BLUETTIはこのデメリットを逆手に取ろうとしているのではないだろうか。
頻繁に持ち運ぶ用途ではなく、準定置型として使うのであれば、その重さは盗難防止や、竜巻などの強風で飛ばされにくいというメリットに転化するかもしれない。
そして何より、-25℃という低温環境でも性能が落ちにくい特性は、LFP電池が苦手とする寒冷地において「実際に使える電力量(Wh)」を維持しやすいという、決定的な強みとなる。
コバルトやリチウムを使わないため、資源の安定確保やコストダウンに繋がる。
そして、10年以上の長寿命をうたうことから、生涯にわたって供給できる総電力量(Total Wh)で見れば、LFP電池を凌駕するコストパフォーマンスを発揮する可能性も秘めている。
既存のリチウムイオン電池の生産ラインを転用できれば、その普及は一気に加速するだろう。
一方で、「RVSolar 48V」については、RV市場が北米ほど大きくない日本での展開には未知数な部分もある。
BLUETTI Charger 1が予想以上の売り上げを記録しているため、日本にも土壌ができつつあるのか。
しかし、その統合設計思想は、今後のオフグリッド電源システムの進化の方向性を示唆している。
結論
BLUETTIは今回の発表で、「寒冷地×Naイオン」「設置容易なRV電源」「家電特化の薄型バックアップ」という3つの具体的なプロダクトを提示した。
これは、ポータブル電源が単なる「大きなバッテリー」から、個々のライフスタイルや社会課題に寄り添う「専門化したツール」へと進化していく大きな転換点を示している。
特に「FridgePower」は、日本の防災のあり方に一石を投じる革新的なコンセプトだ。
価格や詳細なスペックの発表が待たれるが、BLUETTIの挑戦が私たちの生活の安心・安全を新たなレベルに引き上げてくれることは間違いないだろう。
私が今後動向を見守りたいのは以下の点です。
- ナトリウムイオンの実用優位が寒冷以外でも成立するか?サイズ・重量と価格のトレードオフ。
- FridgePowerの薄型フォームファクターは家庭設置性が高いと評価されるか?
- RVSolarの“30分設置”の現実性
スペック表
| 製品名 | Pioneer Na | FridgePower | RVSolar 48V System |
| 電池技術 | ナトリウムイオン | N/A | N/A |
| 容量 | 900Wh | 2,016Wh (最大8,064Whまで拡張可) | 最大122kWhまで拡張可 |
| 定格出力 | 1,500W | 1,800W | 6kW (AC+DC) |
| 特徴 | -25℃の低温環境で作動 | 厚さ約7.5cmの薄型設計 | 30分での簡易設置を謳う |
| 充電性能 | AC+PV併用で最短35分(0→80%) | N/A | N/A |
| グローバル発売予定 | 2025年10月15日 | 2025年11月4日 | 2025年9月30日 |
- 各製品の販売価格、および日本での正式な発売日と価格は本記事執筆時点では未公表です。
- スペックは発表時点のものであり、変更される可能性があります。
